7月7日は、五節句のひとつ「七夕(棚機・たなばた)」
織姫と彦星が、一年に一度だけ天の川で会えるとされていますが、
古くから機織りや裁縫の上達を願うお祭りとも伝えられています。
そして、浴衣を多くの人に親しんでもらおうということから、
『浴衣の日』でもあるそうです。
ここ数年、浴衣を楽しむ機会が減ってしまっていたかと思いますが、
この夏は各地でお祭りや花火大会の開催が発表されています。
予定通り開催され、色とりどりの浴衣で街中が彩られることを願います。
昨年の夏、大君(まさる・19歳)が浴衣の仕立てを習いに来られました。445年の伝統を誇るオランダのライデン大学の日本学科に留学するにあたり、日本文化の象徴である着物について限られた期間内で学びたいとのご希望。1ヶ月の特訓で仕上げた自身の浴衣と、特別に差し上げた男物の着物と羽織等を持参して、単身旅立たれました。
その後、『怒涛の日々が続いた一学期が終了し、勉学・生活のペースにも慣れ、やっと留学生活を心から満喫できる日々を送れるようになった』ことや、着物姿で臨む『日本語の授業のボランティアで、「着物のMasaru~」と親しく呼ばれている』ことをメールで知らせてくださいました。
若い方の行動力とその情熱に感心するとともに、着物が「日・蘭文化交流」のささやかな一助となったことに感謝しています。
3年前に1か月間の特訓で浴衣を縫い上げて、オランダへ単身留学された大(まさる)さんが今秋帰国され、また訪ねてきてくれました。当時19歳の少年でしたが、このコロナ禍の困難の中で無事にライデン大学を卒業。人懐っこい笑顔はそのままに、精悍な顔立ちとなり凛々しい青年に成長していました。
今後も、日蘭の文化交流の懸け橋になりたいという念願の夢と将来への希望で、引き続き大学院に進学。近々オランダの友人の結婚式に出席するとのことでしたので、手持ちのお召しの着物と一つ紋の羽織を差し上げました。茶系の着物でしたが、好きな色だと気に入っていただいたようで、後日現地での着用写真を送って下さるそうです。
その後、11月に渡欧された彼のお母様からお手紙をいただきました。ウィーンのクリスマスマーケットや古い街並みを、芸術や建築など大学で学んだ美術史の知識をもつ大さんの説明付きで楽しまれたとのことです。
また、差し上げたお召しと羽織は、初代の着物を洗張りして仕立て直したものでしたが、来年2月のライデン大学の卒業式に着用して臨まれるそうです。
日本の伝統文化の象徴でもある着物を、若い方が異国での晴れの席で着用してくださることは、和裁に携わる者として嬉しく思い、感謝しています。
お彼岸が過ぎ、ようやく朝晩は秋の風を感じるようになりました。
今年の夏はかつてないほど猛暑が長く続きました。
今月初旬に着物を着て、友人と三人で食事を楽しみました。一人は浴衣+袖無しの長襦袢、もう一人は木綿の単衣+絽の襦袢、最後の一人は絽の江戸小紋+絽の襦袢と盛夏なりのコーディネート。それでも汗だくでの食事会となりましたが、久しぶりの楽しいひと時でした。
そこで痛感したのは、かつての暦に合わせていては、着物も楽しめなくなってしまったということでした。
着物の季節ルールはいつでも難しいと感じるのですが、今後も無理なく楽しみたいと思います。
お取引先の社長さんは、『着物は、これまでの決まり事(季節ごとの約束事)だけにこだわらず、季節の先取りとか、着る人の感じ方(体感温度)で楽しんでいいのではないか』と提案されていたそうです。
これから冬にかけて、着用の機会を増やしたいと思う今日この頃です。
不惑(ふわく)の歳をとうに過ぎるなか、和裁技能士を目指し入所して5ヶ月が経ちました。
不惑、迷いがなくなる年の頃とばかり思っていましたが、「惑わされない=枠にとらわれない」しっかりと学び、道理に基づく自由な発想は、新しいことを発見することにつながるという意味を持つのだと知りました。
基礎の「き」、運針一つとっても手強い課題ですが、和裁の知識、技術の向上は新しい発見につながると信じ、精進する日々です。
一つとして同じものはない着物の仕立ての全てを学ぶことは、一生かかっても難しそうです。
まさに私の生涯学習です。
今年も花火大会やお祭りが少なく、浴衣姿の人を見かけることが減り、寂しく思います。
人の集まりや旅行に規制がかかり、少々気が滅入りますが、新しい着物や小物を揃えることで気分を揚げていくのはいかがでしょうか。
子どものお祝い着のお直しや揚げ取りのご依頼は、昨年より増えているように感じます。
私の好きな本の一節に「希望は人の生活を目的のあるものとし、平和と幸福と勇気でみなぎらせます」とあります。長いコロナ禍の中ですが、十分な準備をした上で着物でのお出かけや、お祝い事を楽しみたいですね。
着物は反物の時と、仕立てあがって形になった時とでは、柄、文様の感じや色の配置で印象がまるで違って見えます。そして、出来上がった着物を着用すると、さらに印象がガラッと変わることもあります。着物は平らに置いて飾る物ではないので、着用した時に一番目立つ柄はどこか、隠れてしまう柄はどこか、街中で着物姿の方を見かけると、すごく勉強になります。
最近、街中で着物の着こなしが素敵な若い方を見かけました。
チョコレート色の着物の丈をふくらはぎの半分ぐらいまでにして、その下に黒のレース地で裾が広くなったズボンを穿き、芥子色のフワフワした兵児帯を締め、ベージュのベレー帽を被るというスタイルでした。
着物にズボンを合わせた着こなしは、初めて見ましたが、斬新で、着物の丈をどれぐらいにするかで、印象がずいぶん変わっていくんだろうなと思いました。
着物の着こなしにインパクトがありすぎて、履物までは覚えていないのですが、靴だったと思います。
いろいろ工夫して、着物を着る姿は見習いたいと思いました。もっと着物を楽しまないともったいないですよね。
着物地には、いろいろな種類があり、日本各地で
さまざまな特徴のある染めの着物や織りの着物が作られてきました。
染めの着物とは、白生地を染色した着物で、
織りの着物とは生糸を染色してから織り上げた着物です。
振袖や訪問着のようなやわらかい風合いの着物は、染めの着物で、
紬のようなざっくりとした独特な風合いの着物は、織りの着物が主です。
生地の違いで仕立てやすさも変わってきます。
反物で見る時と着物に仕立てあがってから見るのでは印象がだいぶ違います。
私達は、お客様の着物姿を見る機会は少ないですが、
その着姿を想像しながら仕立てています。
ますます寒くなり、虫たちも眠っている1月と2月は、着物の虫干しに最適な季節です。二、三日晴れが続く日を選び、たんすの引き出しを階段状に引き出すだけでも充分、効果があるそうです。